地震で入居者が死亡した時に賃貸人が責任を負うことはありますか?
9月というと防災の日である9月1日を含む月でもあり、災害に関連したお話をしたいと思います。
災害というと、「地震」です。
高度成長期にたくさんの借家が建設され、建てられてから40年以上経過している建物が存在しています。もしそのような古い建物を賃貸していて、震度7の大地震が起きて、入居者が死亡した場合、賃貸人は、不可抗力だということで、責任を免れるのでしょうか。
民法には、建物が通常備えているべき安全性を有しておらず、他人に損害を与えた場合には、所有者としての責任を負うという規定があり、この規定に基づいて、建物の所有者である賃貸人が責任を負うのでしょうか。
阪神・淡路大震災のときに入居者らが死傷して裁判になったケースがあります。建物が倒壊し、1階居住者が死傷した事案において、建物所有者の損害賠償義務を認めた判決があります(神戸地裁平成11年9月20日判決)。
この判決では、建物が通常備えているべき安全性を有していなかった、建物設置に瑕疵があったとされました。
また、この裁判では、仮に建物が通常有すべき安全性を備えていたとしてもその建物は倒壊したのではないか、不可抗力ではないか、という点も問題となりましたが、裁判所は、
・仮に建築当時の基準によって通常備えているべき安全性を有していたとすれば、その倒壊の状況は、壁の倒れる順序・方向、建物倒壊までの時間等の点で実際の倒壊状況と同じとは言えない、
・実際の施工の不備の点を考慮すると、むしろ大いに異なるものとなっていたと考えるのが自然である、
・従って、地震という不可抗力によるものとは言えない
・建物自体の安全性の不備と想定外の揺れが、競合して倒壊の原因となっている
として、建物所有者である賃貸人の責任を認めました。
つい最近も、東日本大震災という大地震がありましたが、賃貸人としては、今後も大地震発生の可能性を見据えて、賃貸建物の安全性の確保に努める必要があるでしょう。