第23回
弁護士 小木曽琢也
交通事故というと、自動車と自動車や、自動車と歩行者の接触事故をイメージすることが多いかもしれません。
しかし、近年、自転車と自転車や、自転車と歩行者による事故のように自転車が加害者となる交通事故が増えています。
自転車は、みなさんにとって身近な乗り物だと思いますが、自転車を運転していれば、あなた自身も、あなたのお子さんなどのご家族も被害者にも加害者にもなる可能性があります。これは決して大袈裟な話ではありません。
そして、交通事故の加害者となってしまうと、被害者の方に損害を賠償しなければならないことは自動車の場合と変わりませんし、事故を起こしたお子さんが未成年だからといって誰も責任を取らなくてもよいということもありません。
特に、今年に入ってから、自転車を運転していた加害者に対して刑事裁判でも民事裁判でも厳しい内容の判決が出ています。そのうちのいくつかをご紹介します。
まず、刑事裁判では、自転車を運転しながらスマートフォンを操作していた男性が、対向してきた自転車に気づかずぶつかってしまい、相手の男性に重傷を負わせてしまった事故がありました。この件では、スマートフォンを操作しながら自転車を運転していた男性は、重過失傷害で有罪となりました。
また、夜間に無灯火で自転車を運転していた男性が、散歩中の男性と衝突して重傷を負わせてしまった事故でも、自転車を運転していた男性が重過失傷害罪に問われています。
重過失傷害罪とは、些細な注意を払えば避けられたにもかかわらず、これを怠って人に怪我を負わせてしまった場合に問われる罪で、5年以下の懲役もしくは50万円以下の罰金という刑罰を科されるおそれがあります。
民事裁判では、小学5年生の男の子が自転車を運転して坂道を下っていたところ、歩行者の女性とぶつかって意識不明の状態にしてしまった交通事故では、男の子の親に対し、総額9500万円もの賠償が命じられた民事裁判があります。
事故を起こしてしまった本人が、一般に12歳未満で、自分で良いことと悪いことの区別がつけられない状態であれば、刑事上も民事上も責任を負わされることはありません。しかし、その本人を監護すべき親は、例え現場にいなかったとしても民事上の損害賠償責任を負わなければならない場合があるのです。
現在、保険会社から自転車専用の損害賠償保険や、自動車の損害賠償保険に特約によって自転車で生じた損害賠償も対応できるものがあります。
また、万一、交通事故が起きてしまった場合に弁護士に依頼する費用(相談費用、弁護士費用)を負担してくれる「弁護士特約」というものも一般的に増えています。
もちろん、交通事故を起こさないように注意することが重要ですが、注意していても事故を起こしてしまったり、事故に遭ってしまう可能性があります。万一のときのために、ご自身の保険の内容を見直してみてはいかがでしょうか。
また、仮に交通事故を起こしてしまった、交通事故に遭ってしまった場合には、早い段階で弁護士に相談されることをお勧めします。