第22回
弁護士 山田幸彦
裁判員裁判は、2009(平成21)年5月21日から始まりましたので、4年以上経過したことになります。当初はマスコミでも盛んに取り上げられていましたが、この頃はニュースになることも少なくなりました。
私は、裁判員制度などの司法制度改革が議論されていた2000(平成12)年度、丁度弁護士会の役員を務めていました。その後も数年間、裁判員制度の「制度設計」の議論に関わった経験がありますので、実施後はたしてうまくいっているのかがどうしても気になります。
裁判員制度をめぐっては、決して賛成論だけではなく、根強い反対論もありました。裁判は専門家に任せておけばよい、素人が関与すると間違った判断になるという「ラフ・ジャスティス」論が唱えられました。議論下手の日本人には向かないという「日本文化論」もありました。世論調査では「できればやりたくない」という意見が多数でした。はたしてうまくいっているのでしょうか。
裁判員制度は新しい制度ですので、3年ごとに見直し(検証)を行うことになっており、最高裁は昨年12月、施行から3年間の「裁判員裁判実施状況の検証報告書」を公表しています。それを少し覗いてみましょう。
それによると、3年間で3,884人の被告人が裁判員裁判の判決を受けています。裁判員を務めた市民は全国で21,944人です。案外少ないですが、毎年数千人ずつ経験者が増えていくことになります。
また、裁判員の候補者に選ばれて出頭を求められた市民の約80%が、きちんと当日裁判所に出頭しているのです。もちろん、裁判員に選任された後で欠席する人はほとんどありません。日本人は、本当に真面目だと思いました。
裁判員の皆さんは、体験をしてどういう感想を抱いているのでしょうか。最高裁のアンケートによると、裁判員になる前には50%以上の人が「余りやりたくなかった」「やりたくなかった」という意見でした。ところが、裁判員を経験した後では、実に95.2パーセントの人が「非常によい経験と感じた」「よい経験と感じた」と回答しています。実は、当事務所の元事務職員も裁判員に選ばれて務めましたが、全く同じ感想を述べていました。なる前は消極的な意見を持っていても、やってみるとほとんどの人がよい経験と感じて、裁判員制度を評価しているのです。
裁判官から感想を聞くと、異口同音に、裁判員は真面目でしっかりした議論をしていると言っています。
裁判員制度は新しい制度で、改善すべきところも少なくありません。しかし、私はこれらの調査結果を見て、この制度は着実に我が国に定着していくのではないかと感じました。皆様はいかがですか。