第7回
弁護士 山田陽介
法教育委員会の活動で、ある中学校に出張授業に出かけたときのことです。
授業の内容は、最近国会で可決されたある法律について、賛成派と反対派、それぞれいくつかのグループに分かれ、意見交換をするというものです。
私は、賛成派の子どもたちの中に混じって、一緒に考えました。
「どうしたら、反対派の人たちも納得してくれるだろう?」
生徒たちから意見が出ます。
A「法律って、議員さんたちが一生懸命議論して考えて、最終的には多数決で決まったんだよね。」
B「多数決で決まったなら、みんな従うのが当たり前じゃないの?」
C「そうだそうだ。多数決で公平に決めたのに、今さら文句いうなんてわがままだ。」
多数決で決まったことは、本当に正しいのかな?
C「多数決はルールなんだ。ルールで決まったんだから文句いうなよ。」
A「より多くの人が満足できる公平なルールだと思う。」
別の例で考えてみよう。
男子が15人、女子が14人のクラスで
「明日からの掃除当番は、女の子だけがやる」という法律ができました。
公平な多数決をやって、賛成15票、反対14票で決まりました。
女の子たちは納得できるかな?
B「ひどい。男子のおうぼうだ。」
C「多数決を悪用しているよ。わがままの押しつけだよ。」
どうして「おうぼう」とか「押しつけ」だと思うのかな?
A「反対派の気持ちを無視しているよ。」
子どもたちは、多数決がいつも公平とは限らないことに気がつきました。
反対派の気持ちに配慮することも大事だと考えはじめます。
A「反対派が納得できないところを聞いてみよう。そこをフォローできるように法律を変えれば、もっとよい法律になると思う。」
(H23.11.7 弁護士 山田陽介)